聖杯戦争に参加する以上、敵を殺すことに躊躇はしないと公言する凛さん。その名の通り、凛々しくそして冷徹な魔術師であろうと誓う彼女ですが、その実はバカがつくほどのお人好しな性格をしていました。
その、一本気で姐御肌なところの性格はセイバールートのときから何ら変わるものではありません。最後まで主人公のことを想い・助けてくれたその優しさに、心から有難うと言いたいです。頭脳明晰・運動神経抜群・しかも美人でスタイルも抜群――!この完璧なまでの外観と、お茶目な内面とのギャップがたまらなく魅力的な女の子でした。
本ルートでは、前回ただの脇役に過ぎなかったアーチャー(凛のサーヴァント)に焦点が当てられています。世の全ての人々を救いたい!そのことに全力を注ぎつつも決して叶えられることの無かった彼の人生・・・。同じ理想を追い求める主人公に対して激しい敵意を示すほど、今のアーチャーは歪んでいたのです。
いきなり主人公を襲ったり、マスターである凛を裏切ったりと、やりたい放題に振舞う彼に対して、不審の念で一杯だった私は、最後の最後に彼の真意を知って感動してしまいました。彼はあくまで自己の信念を貫き通したのですね。その姿はまさに「かっこいい!」の一言に尽きます。
皮肉屋な彼が最後にみせた満面の笑顔、そしてマスターである凛のことをはじめて「遠坂」と呼び、自分の事を「オレ」と表した最後のセリフに、全てを救われたような気持ちになりました。
本作をゲームとして捉えた場合、少し気になる点があります。まずは、主人公の不死身さぶりが度を越えているということです。あれでは、戦闘シーンの緊迫感が薄らいでしまいます。次に敵側の意味不明な行動ぶり。自ら進んで勝機を逃がすというのは、どうにも納得できませんでした。さらに、主人公の内面を語るシーンの長すぎること・・・。自分の幸せよりも他人の幸せのほうが大事。この信念は大変素晴らしいのですが、それを事あるごとに語られては堪らないというものです。まあ、本作はビジュアルノベルなのでゲーム性を云々言うのはお門違いかもしれません。以上の点も、全体の出来の良さからみれば些細なことだと思います。
今回はラストシーン(GOOD ENDの場合)がとっても良かったです。セイバー・凛・主人公、三人の明るい未来を予感させる微笑ましいハッピーエンドでした。セイバーには幸せでいて欲しい、これが私の願いですから。(波城)
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