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魔王様、リトライ! 全12話のレビュー

自作ゲームのキャラクター、魔王・九内伯斗(くないはくと)として、全く別の異世界へ転生する羽目になった主人公が、その絶大な力を使って世直しの旅を行っていくといった物語。

その異世界には天使と悪魔、魔物討伐を生業とする冒険者や普通の人間のほかに、うさ耳種族の亜人や魔族と人間のハーフが存在するなど、いわゆる異世界ファンタジー系の定番ともいえる設定で満ち溢れていますが、本作では、そのワンパターンとも言える世界観をあえて全面に押し出すことで、ある意味とても新鮮な作風に仕上がっていました。

魔王様

魔王様は、あくまでも自作ゲーム「Infinity GAME」内のキャラであって、転生先の異世界とは何の関係もないはずですが、何故かその異世界でも、ゲームの管理者権限を使って自由自在に物を作り出せたり、ゲーム内の必殺技を使って強敵をバッタバッタと倒しまくっていきます。

魔王様
魔王様

でも流石に最初のうちは、ゲームのスキルポイントが足りなくて、しょぼいアイテム合成しか出来なかったり、そもそも元の「Infinity GAME」には無かった魔法に対してはほぼ無防備な状態であるなど、その自信満々な態度とは正反対の、理不尽な状況に動揺してツッコミ入れまくる内面描写とのギャップが、観ていてとても面白かったです。

ヤホーという町の名前や、エビフライ・バタフライと言った貴族の名前など、冗談みたいなネーミングセンスも、この異世界のチープさを良い意味で表現していて、小難しいことは何も考えずに、魔王様がその禍々しい態度で人々を助けていくその姿を、スカッとした気持ちで楽しく見ることが出来ました。

アクとルナ・エレガント

寒村の生まれで、村の糞尿処理係として周りの皆から汚い・不浄だとずっと罵られながら育ったアクという名の少女。遂には、悪魔への生贄として捨てられてしまった彼女は、自分を汚れた存在だからと卑下するのですが、そんな彼女を強いハッキリとした口調で諭して、その後は行動を共にして彼女のために色々と世話を焼いてあげることになります。

アクちゃん。守ってあげたい、この笑顔っ!!
アクちゃん。守ってあげたい、この笑顔っ!!

なんでこんなに優しくしてくれるんですか?とアクちゃんに問われて、自分自身何故なんだろうと思いながらも、自然と彼女の喜ぶ姿を望む魔王様の姿はまさに父性愛そのもので、その度に感極まってぽろぽろと涙を流して喜ぶ素直なアクちゃんを観ていると、なんだか私も無性に嬉しくなって仕方がありませんでした。

その2人の道中に、魔王討伐のため三聖女の一人・ルナ・エレガントが突如やって来ます。自信満々に高らかに吠えるルナですが、魔王様の力の前では自慢の魔法を満足に振る暇もなく、あっけなく捕まってはオシオキと称してお尻ペンペンされてしまいます。

その時のキャーキャー悲鳴を上げて痛がる彼女の姿は、本当に悪いことをしてオシオキされてる女の子そのもので、その後は「このスケベ!!変態っ!!」と悪態をつきながらも懲りることなく魔王様達と一緒に行動を共にするようになるルナちゃん。

ルナ・エレガント
ルナ・エレガント

作中でマダム・エビフライが彼女のことを「わがままで素直な子」と評していましたが、まさにそういった表現がピッタリのルナちゃんもまた、アクちゃんとは異なる魅力を有していて、この2人の可愛らしい仕草や言動に、私は今まで何度も心癒されました。それくらい2人とも超お気に入りの女の子です。

キラー・クイーンとエンジェル・ホワイト

アクとルナとは異なる、大人の女性の魅力を持ったキャラクターがこのキラー・クイーンとエンジェル・ホワイトです。

三聖女で次女のキラー・クイーンは男勝りで粗暴な振る舞いの女性ですが、魔物に襲われ窮地に陥ったところを、魔王様のアバター的存在で男気溢れる霧雨零(きりさめぜろ)に助けてもらい、一瞬で恋に墜ちてしまいます。

キラー・クイーン
キラー・クイーン

その際の変わりっぷりがとても面白くて、それまでの乱暴な態度から急に乙女モード全開になって赤面しながらしどろもどろに喋ったり、感極まっていきなり地面をゴロゴロ転がりだすなど、はじめて女性として扱ってもらった嬉しさにメロメロ・きゅんきゅん状態になっている彼女もまた、なんとも可愛らしく女の子でした。

そして終盤にかけて一気に魅力を増してきたのが、三聖女の長女・エンジェル・ホワイトでした。変わり果てた妹達の態度に困惑しながらも、最後まで聖光国の長として魔王様に猜疑心を抱き続ける彼女。

その頑なな姿勢は、他を寄せ付けないオーラを放っていますが、世間知らずでまだまだ若い彼女には、一部の特権階級だけが富と権力を握っている聖光国の悲惨な現状を変える力などありません。只々、その状況を憂うことしかできないのです。

エンジェル・ホワイト
エンジェル・ホワイト

しかしその点を魔王に指摘され、あまつさえ女性扱いされていないと勘違いまでして、恥ずかしさと怒りで大胆な行動に出てしまう初心なホワイト。普段の凛とした物腰とのギャップがとても新鮮で、さらに魔王様の力や真の目的について良い意味での勘違いをしてからは淑やかな彼女らしい心変わりを見せるなど、ホワイトならではの可愛さというのも凄くたくさん描かれていてとても良かったです。

総評

アクやルナたち三聖女のほかにも、Bランク冒険者であけすけな言動が面白い男の娘のユキカゼや、魔王様の側近で神の手を持つ天才女医の桐野悠(きりのゆう)、語尾の「~だぴょん!」「~うさ」がウザ可愛いラビ村のキョンやモモなど、個性的で存在感たっぷりのキャラクターが次々登場しては物語を色々と盛り上げてくれていました。

男の娘のユキカゼ
男の娘のユキカゼ

せめて想像の世界では、万能感マシマシで何でも思い通りに事を進めてみたいとか、困っている人たちは純粋に救ってあげたいとか、悪い奴は徹底的に懲らしめたいとか、そんなヒーロー願望を分かりやすい世界観で疑似体験させてくれたのが、この魔王様、リトライ!というアニメでした。

物語的には、まだまだ先の展開を残したままの状態となってますので、ここは是非とも続編の制作を期待したいところです。そしてまた、彼ら・彼女達の生き生きとした姿をもっともっと楽しみたいです。(波城)

10点

Amazon Primeで全話視聴

魔王様、リトライ! 全12話魔王様、リトライ! 全12話
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