アンゴルモア元寇合戦記 全12話のレビュー
子供の頃に学校の授業で教わった元寇(蒙古襲来)をテーマにした作品ですが、本作はその中でもモンゴル軍やその属国の高麗軍が九州本土に上陸する前の、対馬の地で行われた侵略戦争に焦点を当てて作られています。
罪人として対馬に流刑となった鎌倉武士・朽井迅三郎を筆頭に、他の流刑となった罪人達や、対馬を治める守護代の一族郎党らと力を合わせて、島に押し寄せる数万の元軍と戦う姿が、勇ましくそして凄まじいまでの迫力とともに描かれていました。
鎌倉武士・朽井迅三郎(くちいじんざぶろう)
たった100人ほどの少ない手勢で、数万の大軍を相手にしなければならないという絶体絶命な状況下でも、武士としての誇りと覚悟を胸に、臆する周りの者達を鼓舞しながら勇猛果敢に敵に向かっていく迅三郎。その、まるで肉食動物のような荒々しい存在感はとても大きなものでした。
また、出会った当初は彼のことを罪人として見下していた対馬の姫君・輝日が、あっという間に恋に堕ちていくところも、個人的には観ていてとてもドキドキさせられました。
対馬の姫君・輝日(てるひ)
元寇という史実を題材にした、至って硬派なアニメなので、基本的には死地に赴く男達の生き様、気概といったものが強く感じられる内容となっていますが、アニメと言えばやはり美少女は欠かせないと思っている私にとっては、いわゆるツンデレ状態丸出しで迅三郎に不器用に接していく彼女の存在感は、迅三郎と同じくらい大きなものがありました。
状況が状況なので、二人の仲が男女関係として何か進展するといったことは特になく、迅三郎もそんな彼女の思いに全く気付いていないので、輝日のモヤモヤ感は募るばかりです。少しは気付いてあげればいいのになと、そんな風にも思いながら観ていましたが、戦の事しか頭にない、いやそれ以外の事なんてそもそも考えてる暇など無い迅三郎に、それを求めるのは流石に無理というものですよね。
迅三郎や周りの者たちの活躍によって、圧倒的に不利な状況を何度も掻い潜ってきた対馬の人たちですが、多勢に無勢、最終的にはその多くが悲しい結末を迎えてしまうことになります。ですが、彼らの鬼気迫る奮闘ぶりは元軍の将兵達に底知れぬ恐怖を与えたこともまた事実です。対馬での奮戦が、必ずや将来に続くことを感じさせるラストシーンでした。
江戸時代や戦国時代よりも、さらに昔の鎌倉時代の武士・坂東武者のヤバいまでの猛々しさ。その凄さの一端をたっぷりと見て取れるアンゴルモア元寇合戦記は、あくまでもフィクションですが、対馬における蒙古襲来の一部始終を観る者にはっきりと感じさせてくれる、圧巻の内容であることは確かだと思います。
原作の漫画版では続編となる博多編がスタートしたようなので、いつかはそちらもアニメ化されればいいなあと、そんな風にも自然と思えてしまうくらいお気に入りの作品です。(波城)