極黒のブリュンヒルデ 全13話のレビュー
人類のリセット(滅亡と新人類の創造)を目論む秘密組織、高次生命機構研究所(ヴィンガルフ)によって無理やり人体改造を施されてしまった女の子達の物語。生きるためには鎮死剤と呼ばれる薬を毎日飲む必要があるのに、それでも構わず自由を求めて逃げ出した彼女たちの、まさに死と隣り合わせの日常が、痛々しくそしてときにはユーモラスも交えながら生き生きと描かれていました。
黒羽寧子
この作品の原作者さん(岡本倫)は、あの「エルフェンリート」を描いた方なので、この極黒のブリュンヒルデという作品にも、スプラッターな要素がかなり盛り込まれています。
魔女と呼ばれる彼女たちには様々な特殊能力があって、その中には相手を一撃で粉砕したり、真っ二つに切り裂いたりする能力もあるので、そういった描写も一度や二度だけではありません。ほかにも鎮死剤が切れかかると身体中の皮膚が裂けて血まみれになったり、首の後ろにあるハーネスを押されただけで身体がドロドロに溶けて死んでしまったりと、グロい描写も盛りだくさんです。
エルフェンリートのときは、首や手足が千切れたりする描写があまりにも強烈すぎて、結局途中で見るのをやめてしまった私ですが、今回の極黒のブリュンヒルデでは、構図を工夫することで、なるべくそういった生々しい部分が見えないような配慮がなされていて、おかげで最後までギリギリの緊張感と共に見ることができました。気が弱いくせに、怖いもの見たさも多分にある私にとっては、大変ありがたい演出内容でした。
主人公の村上良太は一度見たものは決して忘れない、いわゆるライトワンスと呼ばれる能力の持ち主で、幼い頃、自分のせいで死なせてしまったクロネコという女の子のことを、今もずっと思い続けている、真面目で行動力のある男子高校生です。
そんな彼の前に、クロネコそっくりな黒羽寧子という女の子が突然転校してきて、その子や、次々と現れるほかの魔女たちをなんとか頑張って守り抜こうとする様子が、全編に渡ってとても頼もしく描かれていました。彼女たちも、自分たちのために命がけで行動してくれる彼に自然と心惹かれて行って、そういったラブコメ要素的な展開も、この極黒のブリュンヒルデでは大きな見どころの一つとなっています。
カズミ
中でも、自分の事よりも他人の幸せを優先してしまう心優しい黒羽寧子と、エロいことばかりして必死に彼の気を引こうとする貧乳ハーフのカズミ=シュリーレンツァウアーの二人による恋の駆け引きは見ていて非常に面白くて、カズミの積極的な態度にヤキモキして無意識のうちに力を使ってしまう寧子や、本当はエロいことに免疫が全くない処女のカスミが、恥ずかしさを誤魔化そうと無理に強がる姿には、何度もキュンときてしまいました。
最後まで笑顔でいることを忘れなかった、天然ボケでお人好しな性格の鷹鳥小鳥ちゃんや、記憶を操作できる能力のせいで、ずっと孤独だった斗光奈波ちゃんの、友達が出来て涙する姿など、ほかにも心に残るシーンがいくつもあって、本当にドキドキとハラハラに満ち溢れた素敵な作品でした。
アニメ版では一応、当面の危機が去ったところまで描かれていますが、原作の漫画版ではさらにその先の展開まで用意されていますので、ここは是非とも続編の制作をお願いしたいところです。魔女として、明日をも知れぬ日々を送り続けている彼女たちの、この先の行く末が気になって仕方がありません。(波城)