ご注文はうさぎですか？ 全12話のレビュー

ヨーロッパ風の街並みを舞台とした日常系の萌えアニメ。日常系という事で、内容自体はとりとめもない事柄の連続なのですが、喫茶店ラビットハウスで働く女の子や、彼女たちの友人、そして周りの大人たちが、みんなとても生き生きとしていて、おかげで最後まで楽しく見続けることができました。石畳の道路に木組みの家々など、異国情緒たっぷりな「ゆるふわ」空間をたっぷりと味わえる、大のお気に入りアニメです。

チノとティッピー

ラビットハウスはコーヒー専門の喫茶店で、そこの一人娘・チノちゃんを中心に物語は広がりを見せていくことになります。大人しくて人付き合いの苦手な彼女が、天真爛漫な女子高生・ココアちゃんと一緒に暮らすことでどんどん表情豊かな女の子へと変わっていくのですが、事あるたびに抱き付いてくるココアに最初は迷惑がっていたチノちゃんが、次第に心を許していく過程が、とても情感豊かに描かれていました。

自分以外の子と和気あいあいに接するココアちゃんに嫉妬してムスッとしたり、「もっとお話ししたい気分です」と言って、モジモジしながら近づいて来たりなど、恥ずかしがり屋のチノちゃんが自分の感情を精一杯表現しようと頑張る姿は、もう絶品の可愛らしさです！見ているだけで心がホワッとしてきちゃいました。

もちろん、チノちゃんを大切に思っているのはココアだけではありません。うさぎなんだけど彼女のおじいちゃんでもあるティッピー、経営不振の喫茶店を立て直したダンディーな父親（名前はタカヒロ）、ココアが来る前からラビットハウスで働いていた快活なお嬢様・リゼちゃん、さらには甘味処「甘兎庵（あまうさあん）」の看板娘・千夜ちゃんに、その幼なじみで極貧生活中のシャロちゃん、チノの同級生で元気いっぱいのマヤちゃん＆おっとり型のメグちゃん、そして不思議系女子の小説家・青山ブルーマウンテン（ペンネーム）さんといった具合に、優しくて温かな人々に囲まれながら暮らしているのでした。

どの子も本当に魅力的で、私もみんなのことが大好きなのですが、中でも特に惹かれたのは、男勝りな性格のリゼちゃんと、彼女に恋しちゃっている後輩のシャロちゃんでした。

リゼ

男勝りとは言っても、別にガサツとかそういうことではなくて、むしろ内面的には、登場キャラの中で最も乙女チックな性格をしているリゼちゃん。軍人の娘で、モデルガンを常時持ち歩くほどのミリタリーマニアですが、それと同じくらい可愛いものも大好きで、愛用のぬいぐるみに一人話しかけたり、メイド姿の自分を思わず想像して頬を赤らめちゃったりするなど、そのギャップの大きさが見ていてとても愛くるしかったです。

外見もとてもグラマーで、そんな彼女の着替えシーンや水着姿のシーンがたびたび登場するのも、個人的にはなんともうれしい限りでした。

ストーリー的には、間違いなく万人向けの内容と言っていい「ごちうさ」ですが、あまりにもリゼちゃんが性的すぎるせいで（本人は全く自覚していないのですが、その無防備すぎるところが、これまた最高にイイんですっ！！）、結果的には万人向けとは言い難い作品に仕上がっていますので（笑）、その点だけはどうぞお気を付けください。

シャロ

続いては、リゼちゃんと同じ学校に通うシャロちゃんですが、彼女の魅力はなんといってもその頑張り屋さんなところにあると思います。金髪ショートの美少女で、頭もとても良いシャロちゃんですが、その生活は作品の中でダントツに貧しくて、バイトを複数掛け持ちしたり、スーパーの特売情報をマメにチェックするなど、優雅で気品あふれる外見からは想像もできないくらいの苦労を背負い込んでいるのです。

こんな境遇、大好きなリゼ先輩にだけは知られたくないと、必死になって隠すシャロちゃんですが、その事実が分かったあとでも、変に彼女の事を同情したりせずに、以前とまるで変わらない友達同士として接し続けるリゼちゃんや、まわりのみんなのピュアな心根にも、私はとても強く惹かれました。シャロちゃんの成長も、本作では大きな見どころのひとつとなっています。

いつの間にか、まるで本当の姉妹のようになっていたチノちゃんとココアちゃん。どこまでも明るくて温かなココアお姉ちゃんにツンツンしながらも甘えてくるチノちゃんの愛くるしさ、そしてそんな二人を含む無垢な彼女たちの日常をもっともっと見続けていたい、そう自然と思えてくる素敵な作品です。（波城）