やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 全13話のレビュー
自分で言うのもなんですが、学生のときから人の輪に溶け込むのが苦手で、ぼっち状態を長く経験している私は、人一倍ぼっちの気持ち・大変さが分かる人間であると自負しているのですが、本作の主人公・比企谷八幡(ひきがやはちまん)は、そんな私から見てもかなりレベルの高い正真正銘のぼっちで、その赤裸々なまでの独白ぶりに、自分の恥ずかしい過去を重ね合わせながら、一気に最後まで見てしまいました。
雪ノ下雪乃/比企谷八幡/由比ヶ浜結衣
集団行動が基本の学校生活において、ぼっちな状態で過ごすというのはとても大変なことで、自分はその辛さにただただじっと耐えて、時が過ぎるのを待つことしかできなかったのですが、比企谷はその状況を卓越した理論武装(屁理屈)で正当化して、最小限のストレスでものの見事にやり過ごしているのです。
まるで目立たない平々凡々な彼が、そうやって開き直って頑張っている姿は見ていてとても爽快で、ああっ、自分も学生のとき、比企谷のように考えることができたらどんだけ楽だっただろうと、そう何度も思い返してしまいました。それくらい心に残る、まことに強烈な印象のキャラクターでした。
もちろん、この「俺ガイル(やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。の略称)」の魅力は彼だけではありません。彼が無理やり参加させられる羽目になった奉仕部の部長で、彼に勝るとも劣らない理論武装の女の子・雪ノ下雪乃(ゆきのしたゆきの)や、彼とは正反対の感情優先な明るい女の子・由比ヶ浜結衣(ゆいがはまゆい)といった二人の存在が、本作を美少女アニメとして最高に盛り上げてくれていたのです。
雪乃も結衣も、本質的には比企谷と同類の人間で、雪乃はその優秀さが仇となってぼっち状態に、対する結衣はぼっちになることを恐れて無理に人と合わせてしまう「隠れぼっち」的な子なのですが、この二人が比企谷と共に学園生活を過ごすうちに、少しずつ自然体な自分へと変化していく様子が、本作ではとても丁寧に、そして情感豊かに綴られていて、そういったストーリー性の高さも、「俺ガイル」の大きな見どころのひとつとなっています。
さらに本作では、ぼっちという存在をさらに際立たせるために、俗に言うリア充なクラスメイトもかなり頻繁に物語に登場してきていて、その分人間関係がさらに複雑なものへとなっていました。しかもリア充な連中を単に嫌な存在として描くのではなくて、彼らにも一定の見習うべき点があるということをきちんと示すなど、色々と考えさせられることの多い、そんなアニメでもありました。
筋金入りのぼっちキャラ・比企谷ですが、彼も年相応の男子として周りの女の子(特に雪乃と結衣)に度々ドキドキしちゃうのですが、その頭でっかちな思考回路が邪魔をして、なかなか色恋沙汰へとは発展しないまま、この第一期は終わりを告げることになります。ただ見ていて思ったのは、比企谷は現時点ではどちらかというと結衣ではなくて、雪乃のほうに気持ちがやや傾いているような感じを受けたのですが、はてさて、続く第二期ではどういったことになっていくのか、その点も今から興味津々なところです。
個人的には、比企谷も雪乃も理屈で相手を見てしまうタイプの人間なので、そういった同類の人間がくっつくよりも、恋は理屈じゃないと素直な感情をぶつけてくる結衣のほうが、案外お互いの足りない部分を埋め合わせることができてお似合いなんじゃないのかなあと、そんな風に思っているのですが、うーん、考えれば考えるほどますます続きが楽しみになってきました。(波城)