未確認で進行形 全12話のレビュー

型にはまらない独特な子は、それだけでなんとなく気になるものですが、この未確認で進行形のメインヒロインである夜ノ森小紅（よのもりこべに）ちゃんも、そんな女の子のひとりでした。

夜ノ森小紅

ある日突然、許婚の存在を告げられ、さらにその本人（三峰白夜）と妹（三峰真白）の二人と同居する羽目になってしまった小紅ちゃん。

一方的に決められた許婚の話に、最初のころは受け入れる気なんて全くなかった彼女でしたが、一途に自分の事を慕って、そしてさりげなく守ってくれる彼の優しさに徐々に触れていくうちに、だんだんと自分も心動かされていって、いつしか自然と心を通じ合えるお似合いのカップルへと進展していくことになります。

家事全般に長けていて人の世話も進んでする、とても気立ての良い小紅ちゃんは、外見からもそのお淑やかな性格がよくわかる（おっぱいはおもいっきり自己主張していますが）、大和撫子的な女の子なのですが、その彼女が、口調だけはなぜだか男言葉に近い言い回しで喋るところに、私は初めて見た時からとても強く惹かれてしまったのです。

いわゆるボーイッシュな女の子が、男のような勇ましい口調で喋るというのは、比較的よくあるパターンで、特に驚いたりもしないのですが、小紅ちゃんの場合は、外見も性格も純情可憐な乙女そのものであるにもかかわらず、喋り方だけは男の子っぽくて、そのギャップの大きさと言いますか、意外性の強いところが、小紅ちゃんの最大の魅力なんだと思います。

しっかりしているようで、実はものすごく弱い性格をしている小紅ちゃんは、自分のことを家事しか取り柄がない平凡な女の子と卑下していて、いつしか誰も、自分のことなんて相手にしてくれなくなるんじゃないかと、絶えず心のどこかで不安に感じている、そういったネガティブ思考の強い女の子でもあるのです。

その不安感を、少しでも和らげようとして、無意識のうちにあんな口調で喋っているのだと想像してしまうと（私が勝手にそう思っているだけで、実際のところは分かりませんけど）、なおさら彼女のことが愛おしく思えてきて、たまらない気持になってしまうのでした。

無口で無表情で、必要以上の事は決して口に出さない白夜ですが、そんな彼だからこそ、たまに発する言葉のひとつひとつには強い意志が込められていて、その彼から「大好きなものは小紅」だなんて淡々と言われちゃったら、そりゃあ彼女もコロッといっちゃうってものですよね。恋愛関係に加えて、絶妙な主従関係（忠犬白夜とその飼い主）？でも結ばれている二人の、仲睦まじく会話する様子が見ていてとても心地良かったです。

ちなみに、この未確認と進行形では、白夜の妹の真白ちゃんも非常に個性的で、その甲高い独特な声質や、まだまだ子供なのに、背伸びして大人ぶったりするところなど、こちらもとても愛くるしいキャラクターでした。

ほかにも、小紅ちゃんの姉で重度の妹コンプレックスでもある夜ノ森紅緒さんの過剰なまでの愛情表現など、個性豊かなキャラが何人も登場してきていて、奥手な二人のラブストーリーを賑やかに盛り上げてくれていました。観終わった後もほんわかとした余韻に浸れる、そんな心温まる素敵なラブコメ作品です。（波城）