風の谷のナウシカのレビュー(映画と漫画全7巻)
風の谷のナウシカといえば、誰もが知っているアニメ映画だと思うのですが、この作品には原作が存在していて、今回はじめてその漫画を最後まで一気に読んでみました。
ナウシカ
基本的な世界観はアニメも漫画も一緒で、大地を我が物顔で利用したり、むやみやたらに汚染しまくる人間たちの“業”というものを主に取り上げています。
アニメでは心優しいお姫様・ナウシカが、そういった諸々の“業”を一身に受け止めてひたすら頑張るのですが、その姿はとても勇猛果敢でなおかつ慈悲深くて、まるで天使のような清らかな存在として描かれていました。王蟲(オーム)と呼ばれる巨大な蟲たちの怒りを鎮めて、再び風の谷に平穏をもたらすというところで、アニメは一応の完結をみせています。
それに対して漫画版では、人間の“業”というものがより赤裸々に描かれていて、あくまでも優等生的に綺麗に仕上がっていたアニメとは、その点において明らかに雰囲気が異なっていました。
いわゆる戦記物としての側面もかなり強く打ち出されていて、トルメキア王国と土鬼(ドルク)諸侯国との間で繰り広げられる終わりの見えない残酷な殺し合いの数々や、人体改造などといった禍々しいテーマなど、心臓の弱い方は心して読まないとトラウマになってしまいそうな描写もたくさん含まれています。ナウシカも単なる聖人君子としてではなく、利己的な欲望も持っている一人の人間として、様々な事柄に立ち向かっていました。
ワイド判 風の谷のナウシカ 全7巻セット
アニメは確かに良く出来ていると思いますが、本当の意味で風の谷のナウシカを知るためには原作の読破は欠かせません。物語の後半部分では、キャラクターのセリフに説明じみたものが多く見受けられるようになってくるので、それが個人的には少々読んでいて「かったるかった」のですが、全体としては読み応えのある漫画だと思いました。
詳しく書いてしまうとネタバレになってしまうので、これ以上は触れませんが、ラストにおけるナウシカのあの行動は、ある意味これ以上ないと言ってもいいぐらいの排他的なもので、アニメのナウシカが好きな人がこの結末を読んで、果たしてどんな印象を受けるようになるのか、なんとも興味深いところです。
兎にも角にも、一見および一読の価値ある作品だと思います。(波城)