貧乏姉妹物語 全10話のレビュー
築40年・風呂無し・1Kという相当年季の入ったアパートで二人暮しを続ける、中学3年生の山田きょうちゃんと、妹の山田あすちゃん(小学3年生)が、姉妹で力を合わせながら、慎ましくも明るく生きていく様を情感豊かに描いている、とてもハートウォーミングな美少女アニメです。極貧といっても過言ではない、かなり酷い貧乏状態の中にある二人ですが、どんなときでも前向きに、明るく頑張っていこうとする健気な姿が、観ていて非常に印象的でした。
左側:山田あす/右側:山田きょう
あれも買えないこれも買えないと落ち込んでばかりいるのではなくて、逆にそういった不自由な状況を楽しんじゃえばいいんだと、そう思うことの出来る二人の心根の清らかさ・温かさに触れる度に、なんだか観ているこちらまで、自然と心が励まされてくるのですから、本当に不思議なものです。独特の癒し効果といいますか、疲れた心を優しく解きほぐしてくれるような、そんな素敵な魅力がこの作品には、秘められているのだと思います。
小学3年生といえば、まだまだ周囲に甘えたくて仕方のない年代だというのに、家庭の事情を子供ながらにも察しているあすちゃんは、決してわがままを言ったりしません。それでころか、バイトで疲れているお姉ちゃんの変わりに、掃除や洗濯、買い物に炊事などを一手に引き受けてこなしてしまうほどの、しっかり者の女の子なのでした。
そういった、大人顔負けの思慮分別さをみせているあすちゃんですが、そんな妹の姿をみる度に、逆に姉のきょうちゃんは、心を痛めてしまうことになります。妹が、本当は色々と我慢しているんだなということが、痛いほどよく判るきょうちゃん・・・。自分が小さかった頃に感じた寂しさを、妹には絶対に味わわせたくはないっ、妹にはいつも笑顔でいてもらいたいっ!唯々その一心で、これまた一生懸命に、妹のために色々としてあげるきょうちゃんの、愛情に満ち溢れた行動力の凄さもまた、とても純粋で素晴らしかったです。
プールに行く代わりに、アパートの庭先で水浴びすることで、楽しそうにはしゃぎまくる二人の幸せそうな姿、妹が授業参観で恥をかかないようにと、スーツ、香水、お化粧でバッチリ決めた姉に対して、いつもの飾らないお姉ちゃんでいて欲しいと、小さな声でつぶやくあすちゃんの可愛らしさ、そして、お姉ちゃんに好きな人が出来たと勘違いして、姉の気持ちが自分から離れていってしまうのではと不安がる妹に向かって、優しい口調で語りかけるきょうちゃんの温かい言葉の数々など、今思い出しただけでも、心がほんわかさせられる名シーンが、全編に渡って幾つも散りばめられている、本当に見所の多いアニメでした。
お互いを心から大切に想いあい、そして信頼し合っている姉妹の、無垢な笑顔がいつまでも心に残る本作。どんな境遇下にあっても、ポジティブな気持ちでいることの大切さ、優しい気持ちでいることの尊さを、改めて教えられた思いです。(波城)