狼と香辛料 全13話のレビュー
行商で生計を立てながら旅を続けている青年「ロレンス」と、豊作の神として長年称えられてきた狼の化身「ホロ(賢狼のホロ)」。人間の女性の姿に変化した彼女が、彼の荷馬車にこっそり潜り込んで、そのままなし崩し的に一緒に旅をする事になる、そんな感じで始まるファンタジー系の物語です。
ホロ(賢狼のホロ)
有能な商売人として、それなりの自信を持ち始めてきた主人公は、もっともっと商売を成功させて、いずれは自分の店を構えようと頑張っているのですが、そんな彼の様子をニコニコしながら眺めては、スルドイ突っ込みを入れまくるホロの言動の面白さに、あっという間に本作の虜になってしまいました。
何百年も生きているだけあって、豊富な知識と経験を有している彼女は、彼の商売がさらに上手くいくように色々とサポートしてあげるのですが、そういった賢い一面とは対照的に、まるで子供のような幼い仕草で、彼の気を惹こうと甘えてみたり拗ねてみたりもする、そういった二面性のあるところに、私は彼女ならではの魅力を感じました。こんなにも感情表現が豊かで、しかも心根が清らかなキャラクターというのは、そうそういないと思います。
自分の事を「わっち」と言い、語尾は「~でありんす」「~くりゃれ」などと言って締めくくる、その独特の口調も、彼女の個性をひときわ際立たせていて、とても良い印象でした。中世ヨーロッパの雰囲気を色濃く感じさせる世界観の中で、茶目っ気たっぷりなホロと、そんな彼女に振り回されつつも惹かれているロレンスとの、相性ピッタリな道中劇が、観ていてとても心地良かったです。
商売の奥深さ、難しさ、そして醍醐味といったものを感じ取れるのも、このアニメの魅力の一つだといえるでしょう。
本作では、通貨の切り上げ・切り下げに関してのカラクリを暴く物語と、商品の信用買いに伴って発生した債権の譲渡に起因する物語といった具合に、2つの大きな取引が描かれているのですが、商いにはこういったやり取り・駆け引きがあるんだなあということを、とても判りやすく示してくれていて、大変興味深かったです。ロレンスとホロ、二人で力を合わせて、様々な困難を乗り越えていく様は、まさに手に汗握る、独特の緊張感に満ち溢れていました。萌えの要素だけではない、ストーリーテラーなアニメとしても、十分に見応えのある作品です。
全13話の全てにおいて、一度も作画レベルが落ちなかったことも特筆すべき点だと思います。テレビアニメとしては、間違いなくトップレベルの美しさを誇っている、そんな作り込みの丁寧さにも好感が持てました。
物語的には、まだまだ旅の途中といった段階なので、ここは是非とも続編を出して欲しいところです。心の底から通じ合う事になった二人が、この先どんな旅を続けていくことになるのか、もっともっと二人の物語をたくさん観てみたい、そんな気にさせられる素敵な作品でした。(波城)
P・S 本作は、第7話だけがテレビで放送されなかった為に、今回のレビューでは、その回に関してだけは考慮に入れずに書いています。第7話はDVD第3巻に収録されるとの事なので、そちらも早く観てみたいです。