ヴァンドレッド/ヴァンドレッド the second stage (ともに全13話)のレビュー
男だけの星「タラーク」で、三等民として冷遇された暮らしを送っていた主人公のヒビキ・トカイが、自分探しの旅に出るところから本作は始まります。
タラークのすぐ近くには「メジェール」という女だけの星が存在しているのですが、彼等は最初から別々に存在していた訳ではありません。もとは同じ移民船に乗って地球からやってきた仲間だったのです。それが今では、お互いを忌み嫌って戦争をするまでの最悪な関係になってしまっていました。
そんな両国の戦争に巻き込まれてしまったヒビキが、ふとした偶然から女海賊マグノ一家に身柄を拘束されてしまい、そのまま彼女達と行動を共にするようになっていく、そんな感じの物語です。
ディータ
ヒビキの他にも二人の男が一緒に捕まってしまったのですが、生まれてこの方、異性なんて見たことすらない男女がいきなり宇宙船(ニルヴァーナ)の中で一緒に暮らしはじめて、何のハプニングも起こらないはずはありません。双方のぎこちない触れ合いがとても賑やかに、そして面白おかしく描かれていました。
ヒビキのことを「宇宙人さん」と呼んでまとわり付くディータの無邪気な可愛らしさや、凛としたメイアのクールビューティな雰囲気、巨乳ボディコンキャラのジュラが魅せる大人のお色気などなど、狭い船内で若い女の子たちに囲まれて過ごす楽しさみたいなものがとてもよく感じられる、サービス精神旺盛な美少女アニメに仕上がっています。
そして本作のもうつとつの見せ所である戦闘シーンですが、こちらもスピード感があってかなりの迫力でした。本作は美少女アニメであると同時に、地球からやってくる刈り取り(様々な星で暮らしている人間を自分達の臓器移植の材料として殺して持ち帰る行為のこと)をやっつける為に闘うニルヴァーナの乗組員達の勇姿が描かれた、スーパー熱血アニメでもあるのです。無数に押し寄せる敵を片っ端から撃墜していくあの爽快感は、いまだに強く印象に残っています。
ただ、あまりにも強すぎる為に、緊迫感といったものがほとんど感じ取れなかったのは、とても残念なところです。
どんなに強い敵が現れても、最後にはヴァンドレッド(タラークの人型兵器・蛮型と、メジェールの戦闘兵器・ドレッドが、未知の生命体・ペークシスの力を借りて合体&融合した巨大戦闘兵器のこと)の無敵の破壊力で相手を粉砕するといったお決まりのパターンが繰り返されるばかりでは、正直飽きてしまいます。
何と言いますか・・・、なんでもかんでもペークシスの力で解決しちゃうといった安易な内容ではなくて、もっとこうハラハラドキドキするような、リアリティのある演出も観せて欲しかったです。
とまあ、多少気になる点はありましたが、第1期シリーズのレベルは総じてかなり高いものだったと思います。明るくテンポ良く進むストーリーは、結構癖になるものでした。
それなのに続く第2期では、それまでのお気楽な内容からシリアスなものへと大幅な路線変更がなされてしまっていて、なんとも理屈っぽいアニメになってしまったのです・・・。
実際に戦闘で亡くなる者や、刈り取りの犠牲となっていく人達など、辛いシーンを連続して描く事で物語に緊迫感を与えていこうという製作サイドの意図はよく判ります。戦争によって引き起こされる悲しい現実をまざまざと見せ付けられることで、本作に対する印象は確かに変わりました。
でもですね。物語に深みを与えるのは、もうそれだけで十分だったと思うのです。終盤に差し掛かるにしたがって、主人公・ヒビキの存在意義だとか、人としての自然な生き方はこうあるべきだとか、そんな説法じみた台詞ばかりが延々と繰り返されるようになってしまって・・・、あれには正直ウンザリしました。小難しいことを並べて物語に深みを持たせようなどとせずに、もっと全体のストーリーを細部まできちんと詰めて貰いたかったです。
例えばですが、100年前になぜ男と女が別々の星で暮らすようになったのか、その理由が全く示されないままに終わってしまっているのが、私にはどうにも腑に落ちませんでした。これって、ヴァンドレッドというアニメの最も基本的な設定だと思うのです。
タラークとメジェールといった二つの星の存在が本作の全ての物語の出発点になっているというのに、それらに関する描写が曖昧なままなんて、あまりにも説明不足といえるのではないでしょうか!?
地球人の刈り取り計画があれで本当に阻止できたとは到底思えません。幾つもの明確でない点を抱えたまま、無理やりハッピーエンドにされてしまっても、観ている側としてはいまいち納得出来ないというものです。
終わりよければ全てよしと言いますが、結末にかけての強引さと理屈っぽさが、折角のそれまでの勢いある展開を台無しにしてしまっていると感じました。なんだかんだいっても本作は美少女アニメであるはずです。しっかりしたシナリオ・演出はもちろんですが、それと同じくらい、いやそれ以上に、美少女キャラそのものの存在も楽しみたいのです。
なんだかやたらと長いレビューになってしまってすみませんでした。前半のシリーズの雰囲気を、そのまま後半にも持ち込んでくれたらなあ・・・、それが全てを観終わった後の率直なレビューです。(波城)