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北へ。Diamond Dust Drops 全12話のレビュー

冬の北海道を舞台に繰り広げられる、総勢6人の女の子達の人生模様。様々な悩みを抱えている彼女達が、それぞれの困難に立ち向かい、克服し、そして成長していく様が情感豊かに描かれています。
 基本的にどのお話も、恋愛が主軸に置かれているのですが、単なるラブストーリーに終始することなく、きちんと個々のキャラクターの生活面にまで言及されているお蔭で、非常に見応えのある内容に仕上がっていると感じました。相手の事が好きだ嫌いだのと、それしか頭に無いようなキャラクターからは、リアリティーなど到底感じ取れませんからね!?本作では、色恋沙汰の前に一人の生きた女の子として捉えることに重点を置いているのです。だからこそ、こんなにも身近に彼女達を想うことが出来たのでしょう。

左の女の子:白石果鈴

左の女の子:白石果鈴

全く異なった性格をしている6人ですが、前向きに頑張ろうとする姿勢は、どの子にも共通したものでした。みんな素敵で、本当に甲乙付けがたいのですが、ここは最も儚げで思わず守ってあげたくなっちゃう事請け合いな「白石果鈴」ちゃんと、独特なイントネーションとマイペースな性格が非常に愛らしい「北野スオミ」ちゃんに、スポットを当ててみたいと思います。

病弱で、もう何年も入院生活を続けている「白石果鈴」ちゃん。本当は簡単な手術をすればすぐにでも退院出来るのに、医療ミスで亡くなった父親の事がトラウマになっている彼女には、その勇気がどうしても持てないのでした。
 そんな中、彼女が自分の見た夢を書き留めておく為に開いているHPに、一通のメールが届く事になります。何度か文通を重ねるうち、この相手は自分の近くにいる人だと気が付くようになった果鈴ちゃんは、影ながら自分を支えてくれるその人に、淡い恋心を抱くようになるのですが・・・、といった感じのストーリーです。
 病気ではありますが、基本的に明るい性格をしている彼女は、普段から元気良く喋り続けています。そんな姿がとても印象的で、それでけに病状が悪化して、担当医から再三手術を勧められる度に怖くて泣き出してしまう姿が、より愛しく映ってしまって・・・、もう堪らない気持ちで一杯になりました。
 果鈴ちゃんには、彼女を大事に想ってくれているお兄ちゃんがいるのですが、なんだか私もそのお兄ちゃんになったような気分です♪最後まで彼女の初恋(ですよね?)と病気の行方が気に掛かる、密度の濃い物語でした。

ある事故がきっかけでフィギュアスケートの世界から遠ざかるようになってしまった「北野スオミ」ちゃんは、ちょっと変わった性格をしていました。公園で泣いている年下の男の子を偶然目にした彼女は、いきなりその子をツカツカと付け回し始めます。そして、怯えて逃げ回る少年に追いつくや否や、「シュークリームは人を幸せな気持ちにしてくれます」と、開口一番切り出すのです。

本人はどうやら、彼の事を元気付けようとしているみたいなのですが、自分から「これはナンパというものですね」と言ってみたり、行く先々で人目もはばからずに可笑しな言動をとってみたりと、とにかく何もかもが達観しているスオミちゃん。度胸がいいといいますか、お節介焼きといいますか・・・、でもそれが彼女独特の優しさの基準なのですし、なによりとても心地良いのだから、本当に不思議で魅力的なキャラクターですよね。

オムニバス形式のアニメにありがちな、内容の薄いシナリオに飽き飽きさせられるといった事も全くありませんでした。むしろテンポ良く進む展開に、毎回ドキドキしながら見続けた位です。最終話では、6人それぞれが色んな形で交わりを持つことになり、いやはや世間は狭いもんですねっ、なんて事も感じてしまいました。心温まりたいときに、最適なアニメだと思います。(波城)

(英題:Diamond Daydreams)9点
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