アミテージ・ザ・サード(OVA版) 全4話/デュアルマトリックス(映画祭公開作品)のレビュー
いつも思ってることなのですが、実写映画を意識したような作りのアニメって、いまいちな出来のものが多くはありませんか?
映画に少しでも近づこうと努力している事は解るのですが、その為にアニメ本来の楽しさが蔑ろにされたんじゃ、まさに本末転倒というものです。
そんなに写実的に描きたければ、最初っから映画で撮れよっ!。・・・なんて悪態の一つもつきたくなる位、おおかたの大作アニメは、お説教臭い感じがしてなりません・・・。
Armitage III OVA
こういった悲しい流れを目の当たりにする度、私は「アミテージ・ザ・サード」という作品を懐かしく感じてしまいます。人とロボットとの恋愛物語、そしてアメリカのハリウッド映画にも決して引けを取らないほどの、素晴らしいアクションシーンがたくさん詰まっている本作は、間違いなく日本を代表するサイバーパンクアニメのひとつでしょう。
製作されてから、もうかれこれ10年は経過していますが、アニメでしか味わえない面白さを追求しているその姿勢には、今も共感させられる点が多々あります。
テラフォーミング(惑星地球化計画みたいなものです)によって、人類の第二の故郷となった火星では、セカンドと呼ばれる非常に精密に出来たロボットが広く普及していました。しかしその裏では、サードと呼ばれるより人間に近づいたロボットが人間社会と溶け込んで生活していたのです。
そんな火星に、地球のシカゴ市警から転任してきたロス・シリバス警部補は、赴任早々からロボット殺人事件に巻き込まれてしまいます。勿論ここでいうロボットとは、サードのことです。過去の経験から、ロボットに対して人一倍嫌悪感を持っていた彼は、サードが次々と殺戮されていくという事実にも、冷めた態度を取っていました。
ところがです。自分の相棒となったナオミ・アミテージまでもがサードであるということを知ったとき、彼はそれまでの、ロボットに対する考えを改めていったのです。
すれっからしで生意気なアミテージ。気分屋な彼女は、急に怒ってみたり甘えてみたりと、散々ロスの事を振り回していくのですが、そんなアミテージを優しく受け止めてやるロスのかっこよさが、とても光る作品でした。
大作志向の作品に見られがちな、全然可愛くないキャラクターデザインにがっかりさせられるという事も全くありません。流行の絵柄とは一線を画する独特で魅力的なキャラクターデザインに、ちょっと幼い感じの声が非常にマッチしていて、まさにアイ・ラブ・ユーなアミテージなのでした。
Dual-Matrix/Poly-Matrix
もうですね、本当に心から好きな作品なのですよ。だから、それだけに続編の「デュアルマトリックス」には、正直落胆してしまいました・・・。
あまり多くは語りたくありませんが、中途半端に事件を起こして盛り上げようなどとせずに、むしろロスとアミテージ、そして二人の間に出来た子供を含めた、三人のラブラブな新婚生活というものを見せてほしかったです。
塗りがCG調に変わってしまっていることは、まあ許せるとしても、声まで変えてしまうのには絶対に納得がいきません!
別に、新しい声優の演技がダメだといっているわけではありませんよ!?ただ、アミテージに対するイメージというのは、あの声質まで含めたものであるということを、製作サイドにはきちんと理解してほしかったと思います。
そんな訳で、「デュアルマトリックス」の見所はラストシーンのみだということにしておきましょう。あのほのぼの感は最高ですから♪
近年の劇場アニメは、メッセージ性とかに拘りすぎだと思います。もっとこう、アミテージのようにアニメならではの楽しみを味あわせて欲しいものです。
なんか生意気な事を色々と書いてしまいましたが、これもアニメを思うが故とお許しくださいね。(波城)