学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD 全12話のレビュー(プラスOVA全1話)
ゾンビに襲われてパニック状態になる人々の様子を描いているホラー系のアニメ。映画だとこういう設定は特に珍しくもなんともないのですが、アニメでこういう設定の作品って、結構珍しいんじゃないでしょうか。物語の最中に部分的にゾンビが出てきたりするのは、いくつか見た事ありますけど、この学園黙示録のように最初から最後までゾンビで埋め尽くされているアニメというのは、今回見るのがはじめてでした。
宮本麗/高城沙耶
生気の無い、ゆら~っとしたゾンビ特有の動きや、ゾンビに咬みつかれ悲鳴を上げながら息絶える人々の様子など、ホラー作品ならではのおどろおどろしい感じがとても上手く表現されていて、ホラー系作品としての完成度は極めて高かったように思います。ゾンビに咬まれた人もいずれは死んでゾンビ化してしまうといった、まるで伝染病のような恐ろしさを前にして、自分だけは助かろうと必死になる人や、逆に自分の身を犠牲にしてでも他者を守ろうと必死になる人など、まさに十人十色な人間の本性をまざまざと見せつけられてしまうアニメでもありました。
ところがです。なぜだか知りませんけど、途中から変な路線に行ってしまうんですよね、このアニメって。キャラデザ的にお色気の要素が最初から入っている作品ではあったのですけど、それはあくまでもスパイス的なもので、主菜そのものではなかったはずなのに、第6話あたりから途端にそれがメインディッシュとして出てくるようになってしまって、そのせいで作品の緊迫感みたいなものが著しく低下してしまっているのです。
毒島冴子
もちろん極限状態なのですから、色恋沙汰の描写もあってしかりだとは思うんですよ。自分もそういったシーンは基本的に大好きですし。でもね、やりすぎはやっぱり不味いというか、もうちょっと作品との相性といったものを考えて欲しかった。せっかくの重厚な世界観が、突然の女体満開お祭り騒ぎによって、すっかり台無しになってしまったことが、見ていてとても残念に感じられました。
終盤に至っては、外連味たっぷりのオーバーなリアクションの連続ばかりで、ますますリアリティの感じられない安っぽいアニメへと成り下がってしまった感のある学園黙示録。
目の前で彼氏がゾンビ化して、それを倒した幼馴染の男にあっさりと鞍替&色目を使って、その一番の理由が「そうしないと自分が生き残れないから」と正直に告げる宮本麗のしたたかさや、人を切り殺したいという欲求を、ゾンビを倒すことで満たしている淑女・毒島冴子の二面性。自信家で毒舌家でもある高城沙耶が、実は仲間の中で最も人情の厚い子だったりするところなど、キャラクターの性格設定や内面の描写といったものが、とても丁寧になされていただけに、なんとも勿体無さの残るアニメでした。
続くOVAでは、ゾンビすら色物ネタとして扱っていましたし、もうこれ以上続編が出ることはまずないんだろうなあ。うーん、考えれば考えるほど本当に色々勿体無い。(波城)