うたわれるもの 全26話のレビュー

「エルルゥ」「アルルゥ」と呼ばれる仲良し姉妹によって、行き倒れのところを助けて貰った正体不明の男性。記憶喪失で、しかも顔半分が意味不明の仮面で覆われているその男に、彼女達の祖母で、村の長でもある「トゥスクル」は、ハクオロという名前を付けてあげて、そのまま家族の一員、村の仲間として住まわしてあげることになります。

エルルゥとアルルゥ

どう見たって怪しい感じのする自分を、温かく迎え入れてくれた周りの人々の恩に報いる為に、みんなの先頭に立って様々な困難に力強く立ち向かっていく様を描いている、一大叙事詩的な壮大なスケール感のある作品です。

本作は、同名の美少女ゲームを原作に持つアニメなのですが、原作の雰囲気を損なう事無く、見事に映像化されていると思います。

ゲーム版をプレイしたのは、もう何年も前の事なので、細かい点などはあまり良く覚えていないのですが、難しくも易しくも無い、絶妙なバランス感覚で作られている戦闘シュミレーションの手に汗握る面白さは、未だに深く印象に残っているところです。

村を守るために望まない戦を何度も行わなくてはならなくなっていくハクオロの苦悩、そんな彼を何時もそっと支えてあげる「エルルゥ」や「アルルゥ」の健気な言動の数々、そして、敵側だった人達がハクオロの人間性に惹かれて、次々と仲間になっていくことへの充足感など、シナリオ面も非常に魅力的に綴られていて、そのあまりの出来の良さに何日も夢中になってプレイし続けたくらい、当時はハマリにハマッたゲームでした。

躍動感溢れるダイナミックなコマ割りで描かれているアニメ版の戦闘シーンの数々、そしてゲームでは音声が収録されていなかった為に聞く事が出来なかったキャラクター達の声を、生き生きとした表情・動きと共にたっぷりと楽しむことの出来る素晴らしさなど、アニメ版のレベルの高さは、まさに賞賛に値するものだといえるでしょう。

原作を知っている方はもとより、未だ本タイトルに触れたことが無い方にも、是非とも本作ならではの独特の世界観を味わって貰いたいと思います。

多種多様な、色んなタイプの女の子が次々と登場してくるといった華やかな側面と、義を重んじて和を尊ぶといった物の考え方・価値観を、真摯に表現していこうとする硬派な側面とが、絶妙なバランス感覚で共存している本作。美少女アニメとしての魅力・見所を十二分に兼ね備えながらも、アニメファン以外の人達にも広く受け入れられるような作風に仕上がっている、極めて稀有な存在の素敵な作品です。（波城）