ブルージェンダー/BLUE GENDER 全26話のレビュー
治療不可能な病に冒され、冷凍睡眠によって未来の医療技術の進歩に望みを託した青年・海堂祐司が目覚めた22年後の世界。それは、眠りにつく前の平和だった頃とは全く異なった、BLUEと呼ばれる昆虫のような形をした謎の巨大生命体によって地球上のほぼ全てを支配されてしまっている、荒廃した世の中だったのです。
BLUEの攻撃によって睡眠状態から叩き起こされ、そのあまりの恐怖の為に失禁までしてしまった彼を救ったのが、ロボット(アーマーシュライクと呼称)に乗り込んだマリーンと名乗る女性軍人でした。訳の分からないまま、とにかく生き延びたい一心で彼女について行った祐司が、彼女と共に熾烈な戦いの中に身を投じていくことになる、そんな感じの物語です。
マリーン・エンジェル
まず度肝を抜かれたのが、キャラクターが次々と本当にあっけなく死んでいくといった演出でした。BLUEの強大な破壊力を前にすれば人間なんて脆い存在でしかないんだっ、そんな現実をまざまざと見せ付けられてしまって、それまでクールビューティーなマリーンの美しさに見惚れながら観ていた私は、一気に緊張感をアップさせられてしまいました。まさに一寸先は闇といった表現がピッタリの、リアルな戦場の光景がこの作品にはあるのです。
当初は、人としての感情を全くといってよいほど持ち合わせていなかったマリーンが、主人公と共に行動するうちに、徐々に女性らしさを取り戻して豊かな感情表現を示すようになっていく、そういった彼女の心の成長過程が、全編に渡って描かれているので、美少女アニメとしての見所もバッチリだと思います。戦場に咲く一輪の可憐な花のような存在感に、終始ドキドキしながら観続けました。
スリーパー(主人公のように冷凍睡眠状態にあった人達のこと)の体内に潜むB型細胞という非常に免疫力の強い物質を利用して、BLUEを倒す為の最後の切り札にしようとするセカンド・アース(BLUEから逃げ延びる為に建造した宇宙ステーションのこと)の上層部と、最後まで祐司を守ろうと懸命に努力するマリーン・・・。隔離されて行方不明になってしまった主人公に会いたい一心で、軍の規律を破ってまで彼を探し出したときの、彼女の嬉しそうな表情がとても愛らしくて良かったです。
最終回に込められたメッセージ、それはたぶん、暴力で問題を解決しようとする限り人類に未来は無いんだということを伝えたかったのではないでしょうか。自然と如何に共存していけばいいのか、その事を悟った二人の幸せな未来を感じさせるハッピーエンドな締めくくり方に、なんともいえない清々しさを覚えました。
中盤において作画レベルの著しい低下がみられた事は、とても残念でしたけど、それ以外は概ね良く出来ている作品だと思います。伏線のあまり無いストレートなストーリー展開も、判りやすくて観やすかったです。青少年にはちょっと刺激が強すぎる(暴力シーンだけでなく、性的行為を連想させる描写も多分に含まれていますので)、大人向けのSFアクションアニメとしてお勧めしたい一品です。(波城)