ソルティレイ/SoltyRei 全24話と特典1話のレビュー
電磁波の層で覆われてしまっている、とある惑星を舞台にしたSFアクションアニメ。
12年前のブラスト・ホールと呼ばれる巨大な落雷事故によって、まだ幼かった娘を失ってしまったロイは、賞金稼ぎをしながら我が子の行方をずっと捜し続けていました。そんなある日、彼は偶然にも空から降ってきた少女に窮地を助けられることになります。
自分が誰であるかさえ判らないと言う、まだまだ幼さの残るあどけない彼女をソルティと名付け、渋々ながらも養女として迎えるハメになった中年おやじのロイ。相棒そして親子として、共に生きていくことになった二人の姿が、明るくそして時には切なく描かれています。
ロイ・レヴァント/ソルティ・レヴァント
この世界では、自分の身体の好きな箇所を、リゼンブルと呼ばれる機械で出来た人工器官に取り替えたりする事が出来るようになっているのですが、ソルティはその全身がリゼンブルによって構成されている非常に強力なパワーを秘めている女の子でした。
そのソルティがやってきたことで、一人暮らしのむさ苦しい生活から一気に華やいだ毎日を送るようになったロイは、本当はまんざらでもないくせに、そんな気持ちを素直に表せなくて、ついつい無愛想な口振りでソルティに接してしまいます。
そんな彼に、遠慮がちながらも寄り添うように接していく彼女の、純真無垢な可愛らしさがとても魅力的でした。ぎこちない新米親子を優しく見守る周囲の人たちの人情味溢れる言動もまた、本作になんともいえない清々しさを与えてくれています。
そんな中に突然、金髪の女盗賊・ローズがいきなり転がり込んできたのだからさあ大変。お転婆で気の強い彼女が加わることで、本作はさらに賑やかなものへとなっていきます。
ただ単に賞金首を捕まえることしか考えていなかったロイが、優しくて思いやりのあるソルティと、義賊としての誇りに満ち溢れているローズに接していく事で、次第に温か味のあるハンターへと変わっていく・・・。弱きを助け強きをくじくっ!!胸のすくような勧善懲悪ストーリーが、本作の前半にはたっぷりと詰まっていました。
このまま爽快感のある物語がずっと続いてくれる、そう思い始めた矢先、本作は一挙にシリアスな展開をみせはじめるようになります。あまり細かく書いてしまうと、タネ明かしになってしまうので差し控えますが、12年前の事故で行方不明になったロイの娘が見つかることが、このアニメのラストを飾るものになるのだろうと、てっきり思っていた私の予想はいとも簡単にハズされてしまいました。本作のシナリオは、もっと深く細かいところまで練り込まれている、非常に見応えのあるものだったのです。
敵役であったはずのRCU(この星の政治と経済を支配している企業組織のこと)の警備部隊内部における確執や陰謀、さらにはプロシードと呼ばれる、遺伝子操作によって通常の人間の何十倍もの身体能力を与えられた女の子達の辿ることになる過酷な運命、そしてローズの転身に次ぐ転身やソルティの意外な正体などなど、ラストに向けて次々と明かされる真実と、複雑に入り組む人間関係&人々の想いに、もう最後までハラハラドキドキしっぱなしでした。
最終話の、機械であることをずっと気にしていたソルティに力いっぱい投げ掛けたロイの台詞が、いまだに心に焼き付いて離れません。ソルティの幸せそうな微笑みも、とても印象的なものでした。絆というものの素晴らしさを改めて感じさせてくれる、本当に素敵なアニメです。(波城)